2010年 10月 31日
なぜUTなのか? part1
お待たせしました、道川です。


上回生の皆さんはもちろんご存知でしょうが、冬季のトレーニングはUTが中心になってきます。
UT(utilization training)とはボートにおける持久力トレーニング、つまり低レートパドルのことをいいます。京大では毎乗艇20km以上を基準としていますね。このトレーニングは有酸素能力を高めることを主な目的としています。

ところで皆さん、疑問に思ったことはないですか?

「なんで20kmも漕がなきゃだめなの?」

と。

僕はとても疑問に思いました。
だってボートのレースって2000mじゃん。
毎日2000mの練習してたほうが速くなるんじゃないの?
せめて10kmぐらいにしようよ。
と思ってました。

そこで、色々調べて見ました。
実はUTをやるのにはちゃんとした根拠があったのです。
これからその根拠をできるだけわかりやすく説明しようと思います。


まず、冒頭でも述べたように、UTは有酸素能力を高めることを主な目的としています。
この「有酸素能力」とはなんでしょうか?

人間(脊椎動物?)がエネルギーを作り出す方法は、あえて分けるとすれば以下の3種類に分けられます。

1.ATP-CP系
・筋肉中に蓄えられたATP(アデノシン三リン酸)やCP(クレアチンリン酸)を筋肉が消費することでエネルギーを得る。
・高い出力を生み出すが、短時間しかもたない
 (ボートのレースではスタート6~10秒ぐらい)

2.解糖系
・筋肉中のグリコーゲンを無酸素的に乳酸に分解し、ATPを得る。そのATPを筋肉が消費する。
・細胞質中(細胞の中)でおこなわれる。
・これも高い出力を生み出すことができるが、高い出力では短時間しかもたない。
 (乳酸を発生させる⇒筋肉が酸性になるため)

3.有酸素系
・グリコーゲンを解糖系で分解して得た物質(乳酸やアセチルCoA)や脂肪を分解して得たアセチルCoAを酸素でさらに酸化して、多くのATPを得る。そのATPを筋肉が消費する。
・ミトコンドリアでおこなわれる。
・低い出力で、長時間もつ。

あえて分ける、と書きましたが、それは3つに分けたのは便宜上のことで、実際にはこの3つの系はつながっているからです。
1のATP-CP系で使われるATPやCPはもともと2・3の系を通して作られたものですし、2の解糖系で作られた乳酸も、最終的には3の有酸素系で酸化されます。

ATや短漕をした時に、「乳酸が溜まって動けない!」というのは、2の解糖系でできた乳酸を3の有酸素系で酸化しきれずに血液の乳酸濃度が高まった状態です。
注意してほしいのは、乳酸は激しい運動時でなくても常に作られているということです。
2の解糖系で乳酸を一気に作りすぎて3の有酸素系での酸化が追い付けなくなる時に問題になるだけです。


長くなりましたが、UTで鍛える「有酸素能力」とはこの3の有酸素系の能力を指していると思われます。

次回はなぜボートで有酸素能力が大事なのかを書こうと思います。


参考文献:
『Roing Faster』Human Kinetics
『トレーニング生理学』杏林書院

※Roing Fasterはエッセン部屋に日本語訳もあるのでぜひ読んでください!
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by rowing-boat | 2010-10-31 22:51


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